「構造化された先延ばし理論」翻訳と感想
はじめに Youtubeで見つけたイグノーベル賞に関する動画に登場した「構造化された先延ばし理論」という研究。非常に気になったので原典をAIの助けを借りながら翻訳してしっかり読んでみた。 （原典はスタンフォード大学の哲学教授であるJohn Perry氏が自身のwebサイトで公開している一つのエッセイである。） もちろんこの翻訳もこの理論に乗っ取り、重要なタスクを先延ばしして書いている。 翻訳文 「人は誰でも、どんな量の仕事でもこなすことができる。ただし、それがまさに今、自分がやるべき仕事でなければ、の話だが。」 – ロバート・ベンチリー、『Chips off the Old Benchley』、1949年 私は何ヶ月も前からこのエッセイを書こうと思っていた。 なぜ今、ようやく書いているのか？ それは、ようやく自由な時間を見つけたから？ 違う。私は採点すべき論文、注文すべき教科書、査読すべき NSF（アメリカ国立科学財団） の提案書、 読むべき博士論文の草稿を抱えている。私がこのエッセイを書いているのは、それらすべてのことをしないための手段なのだ。 これこそが私が「構造化された先延ばし」と呼ぶものの本質であり、先延ばし癖のある人を、成し遂げたことの多さや時間の使い方の巧みさで尊敬され、 賞賛される有能な人間に変える、驚くべき戦略なのだ。 先延ばし癖のある人は誰でも、やるべきことを後回しにする。構造化された先延ばしは、この悪い癖を自分にとって有利に働かせる技術なのだ。 重要なのは、先延ばしにすることが、完全に何もしないことを意味するわけではないということだ。 先延ばし癖のある人は、完全に何もしないということは滅多にない。 彼らは、庭の手入れや鉛筆を削ったり、いつかファイルを整理するための図を作成したりといった、役に立つかもしれないことをする。 なぜ先延ばし癖のある人はこれらのことをするのだろうか？ なぜなら、それらのことは、もっと重要なことをしないための手段だからだ。 もし先延ばし癖のある人に残された仕事が鉛筆を削ることだけであれば、どんな力を持ってしても彼にそれをさせることはできないだろう。 しかし、先延ばし癖のある人は、困難で、タイムリーで、重要なタスクを実行するモチベーションを持つことができる。 ただし、それらのタスクが、もっと重要なことをしないための手段であれば。 構造化された先延ばしとは、この事実を利用して、自分がしなければならないタスクの構造を形作ることだ。 人が心に抱くタスクのリストは、重要度順に並べられる。 最も緊急で重要と思われるタスクは一番上にある。しかし、実際にはリストの下の方にも実行する価値のあるタスクがある。 これらのタスクを行うことは、リストの上にあることをしないための手段となる。 このような適切なタスク構造があれば、先延ばし癖のある人は社会の役に立つ人間になることができる。 実際、私のように、多くのことを成し遂げるという評判を得ることさえできるのだ。 私が経験した中で最も完璧な「構造化された先延ばし」の状況は、妻と私がスタンフォード大学の寮であるソト・ハウスの寮監を務めていた時でした。 夕方、論文の採点、講義の準備、委員会活動など、やるべきことに直面すると、 私は寮の隣にある私たちのコテージを出て、ラウンジに行き、寮生と卓球をしたり、彼らの部屋で色々なことを話し合ったり、ただそこに座って新聞を読んだりしました。 私は素晴らしい寮監として評判になり、キャンパスで学部生と時間を過ごし、彼らを知る数少ない教授の一人となりました。 重要なことをしない言い訳として卓球をし、ミスター・チップス（訳注: 親しまれる先生の意）として評判を得るなんて、最高の仕組みです。 ですが先延ばしにする人はしばしば（その最高の仕組みとは）逆効果な行動をします。 彼らはやるべきことが少なければ、先延ばしをやめてタスクを終わらせようと考え、自分の抱える仕事を最小限にしようとします。 しかし、これは先延ばしにする人の本質的な性質に反し、彼らの最も重要なモチベーションを破壊します。 リスト中のいくつかのタスクは、“定義上"最も重要なものであり、先延ばしをする人がそのタスクを避ける唯一の方法は、何もしないことです。 これは、有能な人間になるのではなく、ただの怠け者になる方法です。 ここであなたは「リストの一番上にある、決してやらない重要なタスクはどうなるのか？」と尋ねるかもしれません。 確かに、ここには潜在的な問題があります。 これを解決する方法は、リストの一番上に適切な種類のプロジェクトを選ぶことです。理想的な種類のものは、2つの特徴を持っています。 第一に、明確な締め切りがあるように見える（しかし実際にはない）。 第二に、非常に重要であるように見える（しかし実際にはない）。幸運なことに、人生にはそのようなタスクが豊富にあります。 大学では、タスクの大部分がこのカテゴリーに当てはまりますし、他のほとんどの大規模な機関でも同じことが当てはまると思います。 例えば、今私のリストの一番上にある項目を取り上げてみましょう。それは、言語哲学の論文集に掲載されるエッセイを完成させることです。 それは11ヶ月前に終わっているはずでした。私はそれに取り組まない言い訳として、膨大な数の重要なことを成し遂げてきました。 数ヶ月前、罪悪感に苛まれ、私は編集者に手紙を書き、遅れて申し訳ないという気持ちと、仕事に取り掛かるつもりであることを伝えました。 もちろん、手紙を書くことは、記事に取り組まないための言い訳でした。 結局のところ、私は他の誰よりもそれほど遅れているわけではありませんでした。 そして、そもそもこの記事はどれほど重要なのでしょうか？もっと重要なことが現れないほど重要ではありません。 そうすれば、私はそれに取り掛かるでしょう。 もう一つの例として、教科書注文書を紹介します。私がこれを書いているのは6月です。10月には認識論の授業を担当します。 教科書注文書の提出期限はすでに書店では過ぎています。これを重要なタスクで、締め切りが迫っていると捉えがちです（先延ばししない人にとっては、締め切りは過ぎてから1、2週間後に本当に圧迫感を感じ始めるでしょう）。 私は学科の秘書からほぼ毎日催促され、学生から何を読めばいいのか尋ねられることもあります。 そして、未記入の注文書は私の机の真ん中に、先週の水曜日に食べたサンドイッチの包み紙の下に鎮座しています。 このタスクはリストの上位にあり、私を悩ませ、表面的には重要性が低い他の有益なことをするように駆り立てます。 しかし実際には、書店はすでに先延ばししない人々によって提出された注文書で十分に忙しいのです。 私が真夏に注文書を提出しても問題ありません。効率的な出版社から人気のある有名な本を注文するだけで済みます。 私は今から、例えば8月1日までの間に、他の、見かけ上はもっと重要なタスクを引き受けるでしょう。 そうすれば、私の精神は、その新しいタスクをしないための手段として、注文書に記入することを快適に感じるでしょう。 ...